日時: 2019年7月6日(土)14時~16時
場所: 湘南高校歴史館スタジオ
テーマ: 新しい時代の創作 ―― 書き手と売り手と読み手の摩擦
講師: 向井湘吾
今月の湘友会セミナーは若手OBで小説家の向井湘吾さんにご登場いただき、「新しい時代の創作 ― 書き手と売り手と読み手の摩擦」というテーマでお話しいただきました。
セミナーには中学時代から向井さんのファンという現役生から20回生の超OBまで参加。Q&Aも活発なにぎやかなセミナーとなりました。
<講師プロフィール>
向井さんは2012年3月に東京大学教養学部超域文化科学科比較日本文化論分科(ジャンルを越えた勉強を目指しこの学科を選ばれたとのこと)を卒業。出版社(編集職)在勤中の2013年6月に『お任せ!数学屋さん』(第2回ポプラ社小説新人賞受賞作、大学在学中に執筆) で中学時代から志していた小説家としてデビュー。これまでに『お任せ!数学屋さん』シリーズを含め、一般向け長編8作、児童書7作、短編3作を発表。
一番好きな本は『アンネの日記』、小説なら『戦争と平和』、児童書では『冒険者たち』。
また、幼い頃から剣道に親しまれ、五段を取得されています。
<講演概要>
出版社での編集経験のある小説家として、また一人の読者として、「新しい時代の創作」についてお話しいただきました。
① 編集者を辞めた理由:
編集者は本作りのいわばプロジェクトリーダー(作家の選定。帯を書く。推薦者の選定。校正。仕事全体の振り分けなど)
編集者は面白い仕事ではあったが、得意なこと(作家活動)に目を向けたかった。
② 小説家の仕事:
プロットの作成。編集者との打合せ。資料の読み込み、取材。設定資料を作成。本文の執筆。再度、編集者と打合せ。その他 (文章の推敲、校正、イラスト確認など)。読書(幅広い勉強)、映画鑑賞など。
③ 日々の執筆スケジュール等をある程度決めている。執筆は午後と夜(比較的早い時間帯)。
連続2~3時間位が執筆のベストパフォーマンス。その他の時間は、読書・勉強など。
④ それぞれの思惑
出版社: 売れる商品を作る
読者: 良いと思える作品(≠売れる商品)を読む
作家: 作りたい作品(≠売れる商品)を作る
⑤ 失敗の原因
・「作品を好きでない人」による口出し
作品愛から出たのではない意見は、断固として無視せねばならない
・単純な意見の相違
編集者の理想と作家の理想との乖離、等
⑥ 新人賞をとるまで
・名作を読む、勉強する
・オリジナル作品を書く
・それを読む(たいていつまらない)
・どうすれば面白くなるかを考える(名作を読む~に戻る)
・面白くなったら、賞に応募
・運が良ければデビューできる
⑦ 読者として
・作品探し:インターネットの発達により、選択肢は格段に増えているが、迷うことも多い。
作品の探し方を身に着ける必要がある。
・アマチュア作品も視野に
⑧ その他(Q&A)
・字数制限への対応について
自分で納得するところを削るしかない。ストーリーを変えずに、字数を表現の仕方で短くする。
・推敲について
自分で読んで面白い文章を心掛け、読み返す。客観的にみるように、少し時間がたってから読み返す。
・文章の作成について
初心者は模倣からスタートしてもよい。